2000年4月13日 人は如何にしてボディビルに至るか(2)
さて、ジムに入会したからといって、それでボディビルに至ったとは言えない。すぐに止めてしまう人がいるからだ。ウェイト・トレーニングは普段使わない筋肉を普段使わないやり方で鍛えるので、最初は誰でも猛烈な筋肉痛に襲われる。このとき筋肉痛を苦痛と感じるか、快感と感じるかで道が分かれてしまう。別に嗜虐性変態性欲のことを言っているのではない。やったんだなあ、という充実感を感じるか、ただ痛みだけを感じるかの違いである。
最初の関門を越えても、2週間や3週間でボディビルは達成されない。最低2〜3ヵ月続けないと肉体の変化は実感できないし、そこで止めてしまえばすぐまた元に戻る。この期間のモチベーションが続くかが問題である。
最初、ジムに入会すると全身を1日で鍛えるルーティンを教えられる。それはジムによって、あるいはその人の年齢、性別によってさまざまだと思うが、私の場合は6種目、すべて3セット-10レップスのルーティンだった。その中で唯一指示された重量で3セット-10レップスできなかったのがフロント・プレスである。以来3ヵ月、私はムキになってフロント・プレスの使用重量を伸ばそうと努力した。他はともかく、最初にできなかったコイツだけは征服してやると思った。それが私のモチベーションになっていたのかもしれない。
当時の高校生にとってジムの会費は結構な出費である。その上プロテインとなればなおさらである。私は両親と交渉して通常の小遣いの他にその分を出してもらった。両親にしてみれば、小さな頃から運痴な息子が初めて自分からスポーツをやると言い出したのだから、多少の出費は構わないと思ったのだろう。多分うれしかったのだと思う。ちなみに、ボディビルのジムに入会するんだと言ったら父は
「右翼じゃないだろうな。」
と念を押した。当時はボディビルと言えば三島由紀夫という連想しかなかったのだろう。
3ヵ月経った頃、そろそろ広げる種目もやった方が良いとコーチに言われ、チンニングとダンベル・フライを追加した。この頃には自分でも身体の変化を実感できるようになっていた。ここまで来るとボディビルに至ったと言えるだろう。もう止めるに止めれない。ちょっと間があいたりすると却って身体に違和感を感じたりする。
だが、そこから先はまた道が分かれることになるのである。