2001年7月7日 入院(2)

  入院初日の検査は、サイド・レイズの筋力測定だった。まさにデッキ・フライ・マシンのような機械に座って、サイド・レイズをするのである。5月の連休中に左も傷めていたので、痛い、痛い。数値にも左右であまり差が出なかったのではないかと思う。
  病棟にはいろいろな決まりがあって、入浴時間も男女で決められている。午前(10:00〜12:00)と午後(12:00〜14:30)に分かれていて男は月水金が午後、火木土が午前、平日の14:30以降は介護が必要な人が使うので一人では入れる人は使用禁止、土曜日は掃除がないのでシャワーのみで、日曜日は使用禁止である。入院した翌日は水曜日なので午後である。さあ、入ろうかというときに呼び出しがかかった。行ってみると筋温測定と筋電図だという。よくTVの実験系番組で見る丸いパッチを貼り付けるやつで、24時間貼りっぱなしだという。肩の周辺に4つばかり貼り付けられ、さらにコードをまとめてべたべた貼られた上、ブラックボックスを2つ腹にぶら下げられた。寝ている間に剥げるとまずいというので、厳重にバンソウコウを貼られたが、30分もしないうちに痒くなってくる。しかも、24時間後まで続けるとなると、翌日の入浴時間は午前中だから、翌日も入浴できない。病院というところは基本的に暑いから昨夜から寝汗の君になっている。うんざりだ。
  サイド・レイズや筋電図は会社のOBの娘が担当だった。この人はここの大学で唯一スポーツ医学の方面を研究していると、以前地元の新聞に載っていたことがある。協力しないわけでないが、これらのデータがどうであったかは聞いてないし、手術後同じ検査をしたわけでもない。何のためにやったんだ?ま、これからリハビリが進めば必要なのかもしれないが。
  金曜日(入院4日目)主治医の診察があった。ちなみに、診察と言うのはナースセンターに隣接した処置室に呼ばれて行われるもので、病室に医師が回ってくるのは回診である。また、主治医は5人いる。偉い順番に5人いて、一番偉い先生がたまたま科長である。その科長先生に呼ばれて診察に行くと、アポロ・エクササイザーのような測定具でまた筋力測定である。器具の端が壁に固定さていて、ワイヤーについたハンドルを掴んで引っ張るのであるが、器具が固定された壁に右半身を向け、インナー・マッスルのトレーニングよろしく肘を体幹につけたまま(肘を右腕で上から抑える)左腕を前から横に開く。左は健常な方の肩である。次いで同じ要領で右をやる。右は痛いほうである。当然右の方が弱くなければならない。ところが、左が先で右が後なもんだから右の方がより要領を掴むので左の倍以上の数値が出てしまった。
「先生、もう一回。左のときは要領がよく分ってなかったス。」
で、左をもう一回やると、右の倍以上の数値が出る。右をもう一回やると、左と遜色ない数値が出る。おそらくもう一回やったらもっと大きい数値が出たことだろう。
「そうかあ、要領を掴んでないってことがあるなあ。こりゃあ、練習してから測定するようにしないとなあ。」
先生は感心していたが、これは私がボディビルダーだから起きたことだと思う。トレーニングの経験の無い人はマッスル・コントロールができないから、こんなに顕著な違いは出ないだろう。同じように肩関節の真後ろへの稼動範囲が大きいと驚かれたが、これも胸のトレーニングの時に肩甲骨を寄せるようにしているからだ。トレーニングの経験の無い人には肩甲骨のコントロールなど普通はできない。が、そのあたりのことは先生には言いそびれた。
  この日の夕方、なんだか(なんか横文字だったが忘れた)があるから来てくれと言われて行ってみると、ホワイトボードやレントゲン写真、MRI画像などを置いた会議室のようなところに医師が大勢集まっている。見たことの無い女医もいるので、この科の医師が勢ぞろいしていたようだ。そこで椅子に座らされて取り囲まれ、科長が私の右手を掴んでぐるぐる回して説明する。結局5分ぐらいで終わったが、ようするに手術の要領を皆で確認しているようだった。