2002年9月18日 ジャパン・オープン(1)
題名はジャパン・オープンですが、9月15日十和田市で行われた一連のコンテストの観戦記を申し述べます。なお、掲示板でお約束の文句は、選手の健闘とゲストの活躍に敬意を表して後回しにします。
例によって私ごとき者がおこがましいことと思います。ご批判、お叱りは掲示板、メールでお願いします。甘んじて受けます。当日は午前4時に出発。そんなことはどうでもいいのだけれど、他人の車を運転しての峠越えは疲れた。会場は劇場スタイル、つまり、観客席が後ろの方に行くにしたがって高くなっていくのではなく、平らな床にパイプ椅子が並べられている「視聴覚ホール」だった。約300人収容とのことだったが、客の入りは85〜90%というところ。全席指定で、私はH4の席。左端の後から4列目であった。座席が並べられている後からでも10倍ズームのカメラで十分撮影が可能であった。
午前8時ごろに着いて(選手集合9時、プレジャッジ開始10時)、待っていると30分ほどで選手が続々と集まりだした。選手以外では、八戸の上沢尚志氏(髪の毛があったので誰だか分らなかった)の一行や、バイセップスマン高橋氏(相変わらず縦縞のシャツ)らがいた。
まずは、Mr.青森から審査が始まり、東北北海道(男子、女子、マスターズ40、50、60)、ジャパン・オープン男子、女子、ミックスド・ペアの順にプレジャッジが進行した。ここでは、ジャパン・オープン男子、女子について2回に分けて申し述べる。
男子はエントリー34名、欠場は無かったように思うがひょっとしたら見逃したのかもしれない。井上浩選手がまずもって優勝候補、その他ゼッケンの若い順に、赤澤範昭選手、奥村武司選手、村松幸大選手、山田頼一選手(字が違いますが、文字化けしますのでこれで勘弁してください)、尾崎昭仁選手、林久司選手、田所勇二選手、三橋信之選手などが主だったところ。そして、佐々木晋選手がどのぐらい仕上げて出てくるかに興味を引かれる。また、Mark Taylorという黒人の選手がエントリーしていたが、司会によると招待選手だという。
そう思っていたら、いきなりこの34人を無理やり2列だか3列だかにしてポーズを取らせたものだから、フロント・ダブル・バイセップスのプレ・モーションで佐々木選手の顔面に隣の選手の裏拳が思いっきり炸裂!慌てて隣の選手が佐々木選手の患部を撫でたものだから、場内爆笑。その後小分けにして比較がなされることになった。ピックアップのときはなるべく多く並べて比較したいというのは分るが、物理的な限界というものがあろうよ。
今回は長身の選手に充実した選手が多いと感じた。そうなると背の低い選手が割を食うことになる。一方で、長身の選手は多くの充実した選手の中で埋没する恐れが出てくる。ラインナップの段階で目立っていたのは井上選手を別格にして、赤澤選手、奥村選手、佐々木選手、村松選手、久保田選手、尾崎選手、金子芳宏選手、小暮貴男選手、田所選手といったところ。
井上選手はラインナップの段階でほぼ優勝という感じを受けた。これには当日観戦した方の多くが同意してくださると思う。意外に目立たなかったのが林久司選手。お前に見る目が無いからだ、と言われるかもしれないが、同じくらいの身長のところに良い選手が多かったので、失礼ながら埋没してしまったのかとも思う。もっとも、ラインナップで目立つのはフィジーク全体の善し悪しより、個性の強いフィジークの持ち主になるので、シンメトリーで勝負するタイプはどうしてもそうなってしまうのだが。
ピック・アップになると尾崎選手と生稲悦宏選手が頻繁に呼ばれるのが目に付いた。尾崎選手がピック・アップで呼ばれるのは意外な感じがしたが、トップ・ヘビーが目立ってしまっていたからだと思う。とにかく背中が広がり上半身がいいだけに、下半身が物足りなく見えてしまう。見ているうちに、これは危ないかも知れないと思い始めた。生稲選手は社会人の選手で始めて見る選手だったが、ちょっと予選通過は難しいかな、という印象だった。
他に、田所選手と浅野喜久男選手が呼ばれていた。田所選手は良いセン行っていると言う印象だった。浅野選手は内田幸二選手や永見信光選手などと比べると少し難しいかな、という印象だった。また、Taylor選手は上腕は良いが、それ以外は今ひとつで予選通過は不可能と思った。
結局、予選通過は赤沢選手、奥村選手、永見選手、内田選手、佐々木選手、村松選手、山田選手、久保田武選手、林選手、金子選手、井上選手、小暮選手で、尾崎選手、田所選手は予選落ちしてしまった。
比較審査のファーストコールは井上選手、林選手、村松選手、山田選手の4人だった。4人中仕上がりNo.1は山田選手(村松選手の方がいいという意見も)だったが、この4人の中では一段下がる印象。村松選手はスケール的に一つ下の印象が出てしまっていた。オーバー・オールの大会ではどうしても身長が影響してしまうが、損をするかもしれないと思った。林選手はいつもながら良く仕上がっていた。それでも、井上選手の優位は揺るがないと思った。
続いて、井上選手、林選手、そして佐々木選手が比較された。佐々木選手のバルクには正直驚いた。現在のJBBFではNo.1ではないかと思う。太い腕、厚い胸、広がる背中というのは素人にも分るボディビルダーの魅力であるが、その点佐々木選手は素晴らしいものがある。ただ、仕上がりはイマイチだった。JBBFのコンテストでは仕上がりが重視されるので、これはどうかなと思った。
ここで、仕上がりと言うことについて私見を述べさせていただく。ボディビルダーにとってバルクが基本であることは言うまでも無い。筋量が無いままでは、いくら人体解剖図のように仕上がっていたとしてもボディビルダーとしては評価は得られない。しかし、選手は仕上げるために命をすり減らして調整してくるのである。また、仕上がりさえすればと言われ続けて、結局一度も仕上げることができないまま消えていく選手の何と多いことか。それを考えると、仕上げる能力もコンテストビルダーの大切な能力の一つであり、審査に当たってはやはり重視されるべきである、と言うのが私の持論である。
この佐々木選手に対する評価がどうなるかで上位が変動すると思ったが、比較のされ具合からしてその後に続いたのが金子選手、小暮選手、少し下がって赤澤選手、奥村選手といったところ。赤澤選手、奥村選手は長身の金子選手、小暮選手が良いだけに不利に思えた。ボディビルはあくまで見た目を競う競技なので、ジャイアント・キラーたるにはフリーキーなバルクを得るか、突出した売りとなる部分を持つかする必要があるだろう。
金子選手と小暮選手はとても良い感じだった。長身(あくまでも日本人としては)ということは重いということであって、東洋人は80kgまでが遺伝的に限界などという、およそビルダー的でない縮み思考を討ち滅ぼすべく頑張って欲しい。
久保田選手、永見選手、内田選手はその次という印象だった。久保田選手は三角筋から上腕にかけて充実しているが、背中が上の方から広がっている印象がある。永見選手、内田選手はさすがにこの面子の中では、という感じ。
今回、他のカテゴリーも含めてフリー・ポーズで多かった曲は「スパイダーマン」である。これだけフリー・ポーズをとる選手の数が多ければ重複するのは仕方ないが、フリー・ポーズの上手い選手が使った後に同じ曲を使うことになると、審査はともかく観客のウケが得られなくなる。今回はエントリーナンバー1番が赤澤選手である。出だしがブレイクした見事なルーティーンを見せたものだから、後で同じ曲を使ってしまうと・・・よほど自信があるなら別だが、その辺りは曲を選ぶとき考えておいた方がいいと思う。今年流行の曲(あくまでポージング向き、ビルダー好みの曲という条件付)は要注意だ。
フリーポーズの音楽でトラブルが相次いだ。東北北海道大会のときから起きていたが、ジャパンオープンでは村松選手が最大の犠牲者で、やり直したら途中で曲が止まってしまい、オマケに脚が攣って、全選手が終わってからもう一回ということになった。そして、改めてやり直しで出てきたら、今度は曲が頭からではなく途中から出てしまい、またもやり直しである。もう一人やり直しになったのが井上選手であったが、やり直しの時は滞りなかった。トラブルはハード(音響機器)自体に問題があるのではという感じのトラブルだった。
ポーズダウンになった。12人でやるもんだから、どうも具合がよろしくない。一杯一杯で身動きが取れないから、最初に並んだ位置でやりつづけるしかない。移動しようと思って後ろに下がったが最後、前列には並べない。ポーズダウンはTOP6でやる方がいいと思う。その方が見応えがあるし、TOP6のステイタスがいや増し、選手も励みになるだろう。
12位からコールされていって、5位佐々木選手のコールの直後、会場を不愉快な静寂が支配した。日本の観客は大人しいからこうなるのだが、海外のコンテストならブーイングの渦と化していたことだろう。ブーイングは大いにやるべきだと思う。そうでないとどんどんJBBFがドツボにはまった集団になっていってしまう。批判をされない組織は歪んでいくものだ。一番簡単で確実な批判は大会での観客のブーイングである。Result
1位 井上浩選手
2位 林久司選手
3位 村松幸大選手
4位 山田頼一選手
5位 佐々木晋選手
6位 金子芳宏選手
7位 小暮貴男選手
8位 赤澤範昭選手
9位 奥村武司選手
10位 久保田武選手
11位 永見信光選手
12位 内田幸二選手やはり井上選手の優勝だった。村松選手はとても悔しそうだった。