2005年1月31日 ZOMBIE
このところ、ゾンビ三昧だ。今の気分にぴったりだから。先週末、たまたまヤマダ電機にいったら、Day of the Dead(邦題「死霊のえじき」)がある。もう、見たら買わずにいられない。思いっきり「死霊のえじき」などと血の滴る文字で書かれているパッケージをレジに出して「ポイント使って」などと、考えようによってはAV買うより余程恥ずかしい(傍目に怪しい)。
ジョージ・A・ロメロのゾンビ三部作は二作目(ZOMBIE , Dawn of the Dead、邦題「ゾンビ」)とこの三作目がDVDでリリースされている。私は一作目のNight of the Living Deadも見たことがあるが、今で言うところのゾンビを定義したのは、このロメロである。知能が無いか著しく低い(犬並み)、筋肉や神経が十全に働かないため動きが遅い、生きた人間の肉を食うがゾンビ同士は共食いしない、生きた人間の肉以外を食うことはない(そもそも死んでいるから食べる必然性が無い)、ゾンビに噛まれると死んで自分もゾンビになる、行動は本能と生きていたときの習慣や記憶に支配されている、脳を破壊されると動かなくなる、などなど。しかし、もともとはブードゥー教の呪術師が死体に呪いをかけて蘇らせ、奴隷として使役するものだ、というのをその手の本で読んだことがある。つまり、ブードゥー教の信者は死後ゾンビとして奴隷にされることを恐れるのであって、ゾンビに襲われることを恐れるのではないという。
ともあれ、生者を喰らうゾンビの映画はその後ウヨウヨと作られたが、今でもゾンビと言えばジョージ・A・ロメロである。昨年、Dawn of the Dead(邦題「ドーン・オブ・ザ・デッド」って、そのままやがな)がリメイクされたが、これに出てくるのはロメロのゾンビとはまったく違うもので、ロメロ自身を初めとして、ゾンビ・ファンからは総スカンを喰らったそうだ(興行的にはまあまあ成功らしい)。私も見たが、ゾンビ映画とは言い難いもので、どちらかといえば暴動映画だ。ちっとも怖くないし(びくっとする場面はあるが)ロメロのゾンビ映画にある、逃れ得ない理不尽な運命への恐怖と嫌悪や、社会風刺、愚かしい人間たちの戯画的な行動がまったく無い。違っているのはゾンビが生きているとき以上に敏捷なことだけではないのだ。
三部作の中で最高傑作は、やはりDawn of the Deadだろう。特に、冷戦時代をリアルタイムで生きた経験のある人には、寒気が身に沁みこむような、言い難い恐怖感をもたらす作品だ。ゾンビそれ自体が怖いのではない。死という理不尽な運命を突きつけられて生きる恐怖と絶望を、むき出しに見せ付けられることによる恐怖だ。(なお、私の記憶が間違ってなければ、Dawn of the Deadは90年代にも一度リメイクされており、私はそれを見ていない。)訂正 90年代にリメイクされたのは Night of the living dead だった。監督はトム・サビーニで、DVDでもリリースされている。2005年5月30日