第8章
余はこの地に移り人間としての寿命を迎えたが、そのまま寂滅するわけにはいかなかった。敵の気配があったからだ。敵の倒し方、敵を倒す武器、そして敵の存在そのものを後世に伝えなければならない。ところが余が一族には文明を保持する能力が無かった。他の二つの部族に技術や生産を頼り、彼らを守護することで生きてきたからだ。余と共にこの地に逃れてきた者たちが死滅したならば、敵の存在はともかく敵を倒す武器などは作れなくなる。余は命ある限り各地にシェルターを作り、武器と食料を作らせた。一は黙ってディスプレーを睨んでいた。俄かには信じ難い話だったし、信じたくもなかった。人工頭脳なんぞに支配されていたなどと。王は続けた。
「阿蘇部族は三つの部族が連合して国を作っていた。そこへ敵が現れたが、敵を感得できたのは余が一族だけだった。それゆえ他の二つの部族は敵の策略によって互いに争うようになり、余は敵の存在を説き二つの部族を調停したが失敗した。やがて国を滅亡させるほどの戦争が起き、余はやむなく余が一族と余に従う二つの部族の生き残りを連れて脱出した。
完
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注1)この物語はすべてフィクションであり、実在の人物、団体、建造物、国家、地域とは一切関係ありません。
注2)本文中の会話はすべて標準語に翻訳してあります。