直 前 情 報
名産品(食べる)編 Part2
いよいよ本当に季節はずれのものです。
5 きりたんぽ
秋田といえば「きりたんぽ」ですが、これは大別して2つの料理法があります。鍋と焼きたんぽ(みそたんぽ)です。
ご存知ない方のために説明すると、「きりたんぽ」とはご飯で作った竹輪です。本式には、うるち米のご飯を半分すりつぶして木製の串に巻きつけ、囲炉裏の火で炙ります。現実には、ほとんどが機械で作られます。本場は県北部の大館市ですが、そもそもは阿仁から白神にかけて活動するマタギの携行食であったといわれています。たんぽ槍の先に似ていることから名づけられたと言われています。
鍋の方は各家家でアレンジがあって、家庭料理化していますが、本式には鶏がらで出汁をとって、作ります。鶏肉、ねぎ、せり、舞茸、しらたきなどを入れた、しょうゆ味の鍋です。秋田の料理のほとんどがそうであるように、濃い口だがあっさりとした味です。
焼きたんぽ(みそたんぽ)は、串に刺したまま(鍋に入れる場合は三つに切る)焼き、味味噌を塗って食べます。これは主に観光地に行くと1本250円程度で売っています。ま、要するにご飯の塊に味噌を塗っているに過ぎないのですが、香ばしい香りと素朴な味わいがなかなかに美味です。秋、少し肌寒くなってきたときにアツアツの焼きたんぽをかじりながらの紅葉見物など、いかがなものでしょう。
ちなみに、本場が県北ということもあって、秋田市内ではあまり食べれる店はありません。もちろん、料亭と名のつくところはメニューに入れてあるのですが、中央通にあった「杉のや」が閉店してからは、「芝良苦(しばらく)」という専門店ぐらいしか思い浮かびません。(地元の人間にとっては家庭料理なので、外で金払って食べるなどということは思いもよらいないんです。)
きりたんぽ自体は首都圏のスーパーなどでも手に入るようですが、ばかばかしく高いと聞き及んでおります。また、出汁も含めて材料一式セットがアトリオンの地下などのお土産屋さんで売っています。インターネット通販でも手に入ります(次の比内鶏を参照してください)。6 比内鶏(ひないどり)
昭和17年に天然記念物に指定された鶏。秋田には天然記念物の鶏が3種類ありますが、この比内鶏は食して美味という奴で、ちょっとかわいそうです。比内というのは地名で北秋田郡比内町の比内ですが、大館市の隣です。
比内鶏は燻製などもありますが、きりたんぽにはこれを用いるのが本式です。株式会社比内鶏でネット販売もしています。7 鹿角牛(かづのぎゅう)
漢字の通り牛肉です。鹿角市(青森県、岩手県との県境、十和田湖の南)で飼育されているもので、日本短角牛です。日本短角牛は黒毛和牛と比べて肉質が堅い=赤身であることが特徴です。つまり、霜降りになりません。それが故に、黒毛和牛より大分安いです。でも、最近はヘルシーということで見直されています。
鹿角牛は十和田湖の奥、奥入瀬渓流のさらにずっと奥に放牧地があって、夏の間はそこに放牧されます。そんなわけで、赤身の多い自然な肉質になるそうです。
秋田市内でこれを出す店を残念ながら知りません。ジャーキーはアトリオンの地下で売っています。
また、雄勝郡稲川町では三梨牛(みつなしぎゅう)という和牛のブランドを出していますが、これもなかなか筋の通った硬派な奴です。こちらは秋田市山王のサン・ビームという店で出してます。8 だまっこもち
これは主に南秋田郡を中心とした家庭料理で、きりたんぽの原型であるとも言われています。きりたんぽが竹輪状であるのにたいし、これはピンポン球ほどの大きさの団子です。また、きりたんぽは作る段階(つまり鍋に入れる前)で焼きが入るのに対し、だまっこもちは焼かずに鍋に入れます。
作り方は、うるち米のご飯をすり鉢で半分擂り潰し(半分ぐらいご飯粒の形が残る程度に擂り潰す)、それを団子にします。 鍋の出汁や具はきりたんぽと同じです。
もともと家庭料理ですから味や出汁は千差万別ですが、出汁を取るために「きんだけ」というキノコを使うことが多いです。「きんだけ」は黄金色のキノコで、出汁はでますが食べて美味しいものではありません。私が子供の頃は雑木林があちこちにあり、秋になるといろいろなキノコを採ることができたものです。他にも「すぎきのこ」を使うと強烈な出汁ができます。
鍋の残りにだまっこもちを一晩つけて出汁を染み込ませ、翌日焼いて食べるとこれがまた美味いです。
秋田市内の料亭などでメニューに入れているところもあります。9 ハタハタ
魚偏に神という字を書いて「ハタハタ」と読みます。体長20cm前後の白身の魚で、これもまた秋田流のあっさり味です。乱獲がたたって資源が激減し、3年間の禁猟の後、漁獲量を厳しく制限した上で漁が再開されました。養殖しない管理漁業として全国的にも注目されています。
私が子供の頃は、まさに掃いて捨てるほど水揚げがあり、大衆魚でした。日本海北部で漁獲があり、北朝鮮や韓国から輸入されていますが、北朝鮮からの輸入物には鉛の錘が入っていることがあります。どうやら重さを誤魔化すために一匹一匹入れたらしいのですが、そんな面倒くさいことしてまで、と少し気の毒になります。
煮たり、焼いたりして食べますが、正直に言ってさほど美味いものでありません。最近は高いので、私はほとんど食べることはありません。しかし、山本郡や南秋田郡の海沿いの地域に住む人たちはこれが無いと正月が来ません。正月料理としてはハタハタの飯寿司があります。強烈に生臭いので私は食べませんが、もうこれがないと正月が来ないと言う人がたくさんいます。
ハタハタの本場は山本郡八森町です(青森県との県境の町)。漁期は12月で、雷が鳴って海が時化た夜に産卵のために接岸します。昔々は秋田市の砂浜にも無数の卵(ブリコと言います)が漂着したそうです。このブリコもまた珍重されます。真っ黒な卵で、塊になっています。皮がかなり固く、齧るとドロッとした中身が出ます。味はほとんどありません。食感を楽しむものです。どういうわけか、ブリコの本場は男鹿ということになっています。10 塩魚汁鍋貝焼き(しょっつるかやぎ)
塩魚汁(しょっつる)はハタハタを原料とするタマリの醤油です。もっとも、最近はハタハタは上記のようなことですので、鰯などを原料として作ります。これを使った鍋料理が塩魚汁貝焼き(しょっつるかやぎ)です。具はもちろんハタハタと野菜になります。
貝焼きというのは、大きなホタテの貝殻を使って鍋料理を作ることです。秋田では「かやぎ」と発音し、鍋料理一般のことをそう言います。
ハタハタのところで触れたように、私自身はとりたてて美味いとは思いませんが、きりたんぽとともに代表的な鍋料理となっています。
なお、男鹿に行くと「石焼き」という鍋料理がありますが、これは樽の中の出汁に魚と野菜を入れておき、そこに焼いた石を放り込んで一気に熱してつくるものです。男鹿のホテルに泊まると実演してくれます。11 稲庭うどん
雄勝郡稲川町で作られているうどんです。現在では佐藤養助商店、寛文五年堂、無限堂などいくつものブランドがありますが、そもそもは秋田藩に全量納入されていたものです。「手綯い」が本式ですが、無論機械ものもあります。稲川町以外で作られているものもあり、最近では組合で認証マークを作って表示しています。このマークがあるものがホンモノというわけです。
秋田市内でも、秋田キャッスルホテル2階(寛文五年堂)やダイエーの向(無限堂)などに店があります。これは冷もありますので、季節はずれではありません。オススメしときます。