ピノキオたちの反乱
第2章
その夜は神経が高ぶってなかなか眠れず、案のごとく金縛りにあった。だから、翌日小包が配達されたときはまだ寝ていた。郵便配達夫が遠ざかる足音をしばらく聞いた後に、戸締まりを確認して和雄は小包をリビングに持ち込んだ。送り状をはがしてカッターでガムテープを切り、蓋を取って中身を床にぶちまけた。一万円札の大封帯と小封帯四つ、しめて千四百万円を脇に寄せると、残りのステンカラーだの防塵マスクだのはがした送り状だのを再び箱に戻し蓋をした。箱を持って立ち上がるとしばらく考えて、引越しのとき以来積んである箱の上にそのまま重ねた。札束のところに戻ってしばらく突っ立ったまま眺めていたが、やがて思い返したようにソファの上に投げ出してあったリモコンを拾ってテレビをつけた。夕べ帰って来たときにはまだ速報扱いで、銀行の店舗外ATMで強盗事件が発生し、現金千数百万円が奪われ銀行員が二名重軽傷を負った。犯人は一人で歩いて現場から逃走した、という程度の報道だった。その後の情報を知りたくてチャンネルをいろいろ変えてみたが、自分の起こした事件をやっている番組はなかった。仕方なくワイドショーをやっているチャンネルに合わせてリモコンを再びソファに放り出すと、札束の傍に真四角に座った。しばらく札束を眺めていたが、札束を抱えて立ち上がって寝室に入った。ベッドに腰掛けて大封帯をはずし、合計十四個の小束を床に並べた。立ち上がってセミダブルのベッドのマットをはがすと、小束を拾って真ん中に均等になるように並べ上からマットをかぶせた。和雄が偽名で札幌に借りたマンションに帰ってきたのは、その日の夜十時を過ぎていた。事件を起こした県の隣県に新幹線で入り、そこから飛行機で新千歳に飛び、新千歳から高速バスで札幌市内に戻った。
つづく
感想をお聞かせください momito@gungoo.com
注)この物語はすべてフィクションであり、実在の人物、団体、建造物、地域とは一切関係ありません。