World Games 2001 AKITA

最 終 総 括

  本当は今後の秋田県のためにも徹底検証しようと思っていたのですが、結局私が関わったのは一部に過ぎないし、それに何より終わってしまったらそれまでヨの空気が漂っています。イベントなんてそんなものかもしれません。

  成功裏に終わったのですから何を言うことでもないと言われるかもしれません。多くの人にとってはそうでしょう。でも、主催者側はそうはいきません。なおかつ、県の公金から補助が出ているのだから県民もそうはいきません。金?金が問題なのではありません。そもそも、金のためにやることを否定したイベントなのです。地元の人間にしてみたら、この経験を生かしたい。生かすためには反省が必要なのです。

   このワールドゲームズを通じて、秋田県民が得たものは大きかったのだと思います。ただ、言われているように、大きな国際スポーツイベントを運営するノウハウが残ったとは思いません。残ったのはノウハウではなくて、やればできるという自信でしょう。それも大きな財産です。

  ノウハウを残すためには徹底的な検証と反省が必要です。少なくとも私が関わったボディビルについては数多く反省がなされるべきだと思います。それは組織委員会、あるいは秋田県、ないしはワールドゲームズの問題ばかりでなく、ボディビルの統括団体も含めての問題です。

   実際、ワールドゲームズは船頭の多い船だったと思います。なにしろ、組織委員会(実質、県庁職員)があり、その下にボランティア・チームが組織され、さらに専門の業者がいます。その上、各競技団体がいるのですが、これがまた国際連盟、日本連盟、県連盟と3者なのです。それらの船頭たちが事前にほとんど打ち合わせのないまま現場で仕事をしたのですから大混乱、非難、陰口の応酬となってしまいました。何しろ弁当一つ食べるにも、1階から食堂(会議室)の4階に行くまでの間に、各階ごとに違った指示が出たり、いちいち呼び止められて文句を言われたりするのです。

  実際、競技によってそのあたりはかなり違ったようです。とにかく、事前に打ち合わせがほとんどなされていないというのが不思議でたまりません。そして、「○○は全然働かない」などと陰口を言われるのです。私は県連盟の下っぴきとして参加していましたが、指揮系統がはっきりせず、誰に指示を仰いだらいいのかさっぱり分かりませんでした。だから、最終的には選手にとって良いように自分で判断して動いていました。

  私のいたところで一番問題だったのは語学ボランティアの方たちと、競技関係の裏方の間の意思疎通に時間がかかったことです。ボランティアの配置は組織委員会とボランティア・チームの間で決められていて、競技関係者が望むところに配置してもらうには大変な手間がかかりました。また、そのために競技関係者が欲したときには、さっきまでそこにいたボランティアの方が居ないということが頻発し、そのたびにあたふたと探しに走るハメになりました。そうこうしているうちにコンテストは進行してしまいます。

  その上、ボランティアの人たちは競技に対する知識がありませんから競技関係者が要求していることがよく理解できません。そのため、まず両者の間の意思の疎通に時間がかかり、選手に話を持っていくのがぎりぎりになってしまったり、選手とボランティアの方の間で話がうまく通じなかったりしました。

  現場で連携が必要なボランティアの方々と競技関係者が、事前に打ち合わせをする機会はありましたが、それは生かされませんでした。具体的にはボランティアの方々が県大会を見学に来たのですが、競技関係者と話をすることなく、コンテストを見て(それも途中まで)帰ってしまったのです。あの時、話し合いがもたれていれば全然違っていたでしょう。この競技の試合で発生する特有の問題は何であるのか、もちろんそれは組織委員会のボランティア担当の人から説明はされたのでしょうが、現場でことにあたる競技関係者にはどの程度ボランティアの方々がそれに通暁しているのか分かりませんし、実際、ほとんど分かっていませんでした。

  World Games 2001 AKITAは成功だったのだと思います。観客の入りも事前の心配を吹き飛ばす大入り満員でした。私は職業柄、経済効果だのという、およそ屁のツッパリにもならないことを尋ねられますが(推計の上に推計を重ねるので、出た金額はほとんど信憑性がない)、経済効果なんてタカが知れています。そもそもワールドゲームズは商業主義の否定を理念としているのではないのですか?

  たった11日間でも、参加した人の胸には思い出が残った。知り合った人たちの間には友情が生まれた。それでいいじゃないですか。稼いだ金なんて、どうせ来月には仕入れの決済でほとんど残らないでしょう?

  金なんて所詮は天下の周りもの、あなたの胸の中の思い出こそは誰にも奪われることはないのです。

2001年9月2日  柔威樅人


  

 

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